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コラム
2022/5/8
非侵襲型BCI ガジェットレビュー5選

 

世界中の BCI 企業が様々なユースケースに取り組んでいる。

BCI というとデバイスコントロールや医療目的に利用する事例が有名だが、教育・スポーツなど一般消費者に身近な領域でも BCI は使われている。

BCI2022カオスマップ 画像:BCI カオスマップ 2022

 

特に非侵襲型 BCI を提供する企業は年々その数を増し、大企業が非侵襲型 BCI のスタートアップを買収する事例も出てきている。Snap 社が非侵襲型 BCI スタートアップの NextMind を買収したという今年 3 月のニュースは、多くの方々を驚かせたことだろう。

 

NeurotechJP では以前非侵襲型 BCI スタートアップを 5 選に絞って紹介したが、研究者に限らず一般消費者でも気軽に使える BCI は増え、機能性と価格のコストパフォーマンスから一般消費者用の BCI は注目を浴びてきている

今回の記事では、 「BCI 触って脳活動データ分析してみたいんだけど何を使えば良いのか分からない」という 脳活動データを使って何かしてみたい開発者の方に対して、一般消費者用の BCI の中でも NeurotechJP が取り上げた特に注目すべき 5 つの BCI を、実際に使用した感想と共に紹介していく。

 

Affordable BCI 主要プレイヤー全体像

Affordable BCI 主要プレイヤー競争優位性マップ 画像: Affordable BCI 主要プレイヤー競争優位性マップ

本記事の始めに BCI カオスマップを紹介したが、上図はその中でもデバイス購入可能な非侵襲型 BCI 主要プレイヤーをピックアップし、価格帯と利用用途の軸でその競争優位性をまとめたものである。

*企業によっては提供するデバイスで価格が違うことがあるが、デバイスの平均の価格を基準としてマッピングしている。

 

本記事では、非侵襲型 BCI の中でも特に注目すべき下記 5 つのデバイスに対してレビューをしていく。

  • Muse
  • Emotiv
  • OpenBCI
  • Neurosky
  • Neurosity

 

Muse

Muse2 画像:Muse2

会社名Interaxon
創業年2007
総資金調達額$30.4M
カナダ

 

Muse は、EEG(脳波)や心拍数を計測し、独自のモバイルアプリと併用することで、瞑想や睡眠の質をあげることができるデバイスだ。

提供されるプロダクトは 2 種類あり、下記のような違いがある。

 

プロダクト

Muse 2

価格$250
チャンネル4 チャンネル(TP9, TP10, AF7, AF8) [Dry]
機能・EEG 測定 ・瞑想セッション in app
Raw データ取得可能

 

Muse S

価格$400
チャンネル4 チャンネル(TP9, TP10, AF7, AF8) [Dry]
機能・EEG 測定 ・瞑想セッション in app ・睡眠セッション in app
Raw データ取得可能

 

長所

  • 前頭葉を計測するために十分なチャンネルを兼ね備えているのにもかかわらず安く、コスパが良い。
  • データ取得や処理するにあたってのライブラリ・SDK が充実している。

 

短所

  • 計測の精度が悪く、ノイズがよく入る。

 

開発リソース

 

Emotiv

画像:Emotiv EpocX 画像:Emotiv EpocX

会社名Emotiv
創業年2011
総資金調達額$120K
米国サンフランシスコ

 

Emotiv は、研究や開発用に数多くの脳波デバイスやアプリケーションを提供するスタートアップだ。 現在正規品として提供されているデバイスは主に、3 種類ある。

 

プロダクト

Emotiv Insight

価格$500
チャンネル5 チャンネル [Semi-dry]
機能・EEG 測定
Raw データ取得可能 (Emotiv Pro に課金必要)

 

Emotiv Epoc-X

価格$850
チャンネル14 チャンネル [Semi-dry]
機能・EEG 測定
Raw データ取得可能 (Emotiv Pro に課金必要)

 

Emotiv Epoc-Flex

価格$1699+
チャンネル32 チャンネル まで
機能・EEG 測定
Raw データ取得可能 (Emotiv Pro に課金必要)

 

長所

  • Emotiv Launcherという無料のソフトウェアサービスをインストールすれば、Emotiv が提供する BCI アプリケーションをすぐに試すことができる。

 

短所

  • Raw データを取得するのに Emotiv Pro への課金が必要で、高い(学生は安い)

*Emotiv Pro

  • Standard: $99/mo
  • Student: $29/mo

 

開発リソース

 

OpenBCI

OpenBCi “Mark IV” 画像:OpenBCi “Mark IV”

会社名OpenBCI
創業年2014
総資金調達額不明
米国ニューヨーク

 

OpenBCI は、EEG 限らず様々な生体信号を取得できるデバイスを提供する。脳波をリアルタイムでモニタリングできる独自のソフトウェア OpenBCI GUIも提供する。

同社が提供する EEG デバイスには下記の種類があるが、脳波信号を取得し PC に伝達するための Board も購入する必要がある。(Cyton Board)

 

プロダクト

Ultracortex “Mark IV” EEG Headset

価格$1149(Max)
チャンネル16 チャンネル まで
機能・EEG 測定 ・10-20 システムに沿った 35 個のロケーション
Raw データ取得可能

 

EEG Electrode Cap Kit

価格$799(Max)
チャンネル21 チャンネル
機能・EEG 測定
Raw データ取得可能

 

長所

  • “Mark IV” では、16 個の電極を 10-20 システムの好みのロケーションにカスタマイズできるため、後頭葉メインでとりたいなどのあらゆるニーズに対応できる

 

短所

  • EEG デバイス限らず、Cyton Board などの基盤も購入する必要があるため、結果的に 10 万円~20 万円はかかってしまう。その他のパーツも高いため、買い換えるのもハードルが高い。

 

開発リソース

 

NeuroSky

画像:NeuroSky 画像:NeuroSky

会社名NeuroSky
創業年2004
総資金調達額不明
米国サンノゼ

 

NeuroSky は、コンシューマー向けに$100 から購入できる脳波デバイスを提供するだけでなく、開発者向けの SDK キットも無料で提供する。また、NeuroSky のコアテクノロジーとなっているチップ基盤を販売する事業も行う。

NeuroSky は BCI 業界のパイオニアとして活躍してきたが、NeurotechJP ではその軌跡を同社 CEO の Stanley にインタビューすることができたので併せてご覧いただきたい。

 

プロダクト

MindWave Mobile2

価格$110
チャンネル1 チャンネル(前頭葉)
機能・EEG 測定
Raw データ取得可能

 

長所

  • とにかく安い。NeuroSky をハックするための SDK や OSS が充実している。

 

短所

  • 電極が 1 チャンネルしかないので出来ることがかなり限られる。(α 波取得等)

 

開発リソース

 

Neurosity

Neurosity “CROWN”

画像:Neurosity “CROWN”

会社名Neurosity
創業年2018
総資金調達額不明
米国ニューヨーク

 

Neurosity は、デザイン性・処理能力に優れた独自の BCI「Crown」と開発者用 SDK を提供しており、脳波コントロールを試してみたいという開発者に多く使われている。NeurotechJP では同社の CTO であり共同創業者である Alex にインタビューし、BCI を開発するにあたっての道のり等をお聞きできたので、併せてご覧いただきたい。

 

プロダクト

Crown

価格$1000
チャンネル8 チャンネル(CP3, C3, F5, PO3, PO4, F6, C4, CP4)
機能・EEG 測定 ・集中力向上セッション in app
Raw データ取得可能

 

長所

  • 開発者用 SDK がかなり充実していて、BCI アプリケーション開発のハードルが低い。
  • 脳波計にもチップが入っているために、データの保存やバックグラウンドでの処理などの開発を試みることができる

 

短所

  • 今のところなし。

 

開発リソース

 

利用用途別

今まで EEG データを触ったことがなく、はじめて脳波分析を試してみたい入門者や初学者は比較的低コストで始められる Muse、NeuroSky。

既に EEG データに触れた経験があり、豊富でバラエティのあるデータを元に計測や分析・開発をしたい場合は Emotiv, OpenBCI。

脳波分析限らずモバイルや Web と連携した BCI アプリケーションをフルスタックで開発したい場合は Neurosity。

 

さいごに

今回は 5 つの非侵襲型 BCI を長所・短所と共に取り上げた。これらの内容はすべて NeurotechJP の意見・見解であることを認識いただきたい。

 

研究向けと比較して手頃な価格で充実した SDK があるため、脳波分析をちょっとしてみたい方には是非試してもらいたい。

 

一般的に、BCI 業界でのビジネスには BCI を使ったキラーユースケースを探すことが重要とされているが、同時に BCI という新しいタイプのデバイスをより多くの人々に提供する必要がある。今回紹介した BCI にもあったように、お手頃でかつ機能性がありカスタマイズしやすい BCI が、今後我々の実生活における BCI のメインストリームになるだろう。

ライター

Hayato Waki