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インタビュー
2022/9/25
脳波計測・刺激オールインワンのデバイスを提供 iMediSync | Seung-Wan Kang

 

世界最大級のテクノロジーイベントCES2022には、約 2300 の企業が出展をし、ニューロテック企業も多く参加していた。その内の一つに、独自の EEG デバイス”iSyncWave”を用いたデモを行い、一際注目をひく企業があった。その企業こそ今回インタビューを行ったiMediSync 社である。(NeurotechJP では、CES2022 ニューロテックレポートを販売しているのでご興味のある方はこちらをご覧頂きたい。)

 

今回は iMediSync 社の CEO であるSeung-Wan Kangに、同社の技術の裏側と今後の展望についてインタビューを行った。

 

iMediSync 社とは

同社は、独自の EEG デバイス"iSyncWave”に加え、脳波解析 AI とクラウドベースのプラットフォーム提供する。

isyncwave iSyncWave

 

実際に CES2022 のデモでは、ブース訪問者の脳活動を計測し、後日およそ 4 枚にわたる診断結果を PDF 形式で取得することができた。

CES2022デモで取得した診断結果PDF (HRVに関するレポート) CES2022 デモで取得した診断結果 PDF (HRV に関するレポート)

CES2022デモで取得した診断結果PDF イメージ 画像:診断結果イメージ EEG

 

同社は、ソウル国立大学病院の疼痛に関わる分野で医師として勤めていた Seung によって 2012 年に創業された。

 

創業のきっかけは倫理的な問題をも解決できる家庭用の脳機能マッピングソリューションが必要だと気づいたことだという。

慢性痛は基本的に感情と認知問題が組み合わさって発生しています。そのため、脳機能を図り症状を診断するのが一般的なのですが、倫理的な問題で一部の患者に対して脳機能を図ることができない場合があります。 そこで私は、一患者が個人で定量的に計測できる脳機能マッピングのソリューションが必要だと気づきました。

 

サービス・プラットフォーム提供への道

脳機能マッピングソリューションを提供すると決めてからは、 EEG データベースの作成、クラウドベースのソフトウェアの開発、デバイスの開発とその軌跡には幾つかのステップがあったと Seung は語る。

そこで私は EEG と既存の技術、データサイエンスを掛け合わせた脳機能マッピングソリューションを開発することにしました。 初めのステップとして性別ごとに EEG データを格納するデータベースの構築を国家プロジェクトとして行い、その後、クラウドベースの EEG 解析基盤を SaaS ツールとして提供し始めました。その後、診断と治療が一つにまとまったオールインワンのデバイスを開発しました。

 

脳機能をマッピングし脳に関する症状を診断する方法として、EEG に限らず MRI など他の脳活動を計測する方法もある。同社が EEG を使う理由は何なのだろうか。

私たちが焦点をおいている感情や認知機能の変化は、EEG をも変化させます。ですので、EEG を計測すれば、感情や認知状態を測ることできるのです。また、EEG はリアルタイムでデータを取れるため、刺激技術を用いて行うニューロフィードバックとの相性が良かったというのもあります。

 

同社の強みは、脳活動の計測に加えて LED を使った刺激も一つのデバイスで行えることだ。

どのようにして、Seung は刺激技術をデバイスに搭載しようと思ったのだろうか。

私は初期からニューロフィードバックに興味を持っていました。 LED や電気を用いた刺激技術は、脳自身の回復機能をサポートすることに役立ちます。 例えば、足を捻った時に刺激治療で痛みを少しでも減らすことができれば、その後は脳がその先の治療をコントロールし、脳自身でフィードバックが行われ痛みの改善につながります。

 

脳を介した刺激技術は多くの研究が行われている。電気や磁気を使った刺激が一般的な方法とされており、製品化に成功している企業も多くある。

多種多様な刺激方法がある中、どうして同社は LED という光技術に着目したのだろうか。

 

デバイスの最小化が可能である点と狙った脳の部位に光を照射しやすい点がその理由だと Seung はいう。

磁気刺激(TMS,etc)は、一般的にその大きさから家では利用することが難しく、電気刺激(tDCS,etc)は、狙った部位に電気刺激を当てることが難しいです。 しかしながら、LED を用いた光刺激では、そのデバイスをかなり小さくすることができますし、狙った特定の場所に容易に光を照射することができます。

 

デバイス設計での課題

iSyncWave は国際的なプロダクトデザイン賞である Red Dot Design Award を 2022 年に獲得している。

そのデザイン性に加え多くの機能を兼ね備える iSyncWave であるが、そのデバイス設計には多くの壁があったという。

一番苦労したのはデバイス設計でした。頭皮の正しい位置に電極が密着して配置されるようにしたかったので、各個人の頭の形に沿って自動でデバイスをフィットさせる必要がありました。

 

実際に CES2022 で筆者は同デバイスを装着したが、自分の頭の形に自動でフィットしていく感覚を感じた。そのためリアルタイムで表示されていた脳波はノイズがあまりないものであった。

CES2022 同社ブースにて実際に脳波などの生体情報を計測している写真 CES2022  同社ブースにて実際に脳波などの生体情報を計測している写真

 

海外展開を見据える

CES には世界中から様々な業種の人が訪れる。そのため、同イベントに出典する企業は自国外からのクライアントを獲得できる可能性もある。

 

iMediSync 社も例外ではない。注目を引く大々的なデモのお陰もあり、アジア諸国限らずヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなど多くの企業から共同開発やサービス購入の商談が来たという。今後は海外展開を狙っていくそうだ。

また、同社は先月、米国での医療機器販売の市販前許可(510k)を FDA から取得した。そのため、米国内にても同社のデバイスが流通する日は近いだろう。日本での医療機器販売許可の申請も検討中であるという。  

さいごに

今回は iMediSync 社の CEO Seung-Wan Kang に、同社が提供するサービスを開発するまでの道のりをインタビューさせていただいた。

軌道に乗る同社であるが、それに至るまでには多くの意思決定と課題の克服が必要であった。それゆえに革新的なデバイスならびにプラットフォームを現在提供できているのであろう。 海外展開を見据える同社の今後の動向も是非注目である。

ライター

Hayato Waki

インタビュアー

Hayato Waki
Kai Irwin